研究テーマ
心療内科学講座〈研究概要〉
1. 早期からの緩和医療における行動学的アプローチの開発
がん患者、その家族介護者に対する痛み、不眠、QOL低下の改善を目指した非薬物的治療の開発をシステマティックに行っている。心拍変動バイオフィードバック、共鳴呼吸法、家族ケアを用いた行動学的アプローチに関する研究報告を複数報告している。
2. がん領域における心身症特性や身体化に関する検討
健常者、がん患者、家族介護者のアレキシサイミア、アレキシソミアの疫学研究から始まり、潜在的な疾患との関連や治療反応との関連をそれぞれ報告している。現在はその内的生理反応や外部表出反応を活用した治療開発を目指している。
3. 日常臨床で活用できるプラセボ効果、相互作用効果の体系化
超音波画像を用いた視覚的フィードバック及び、リラクセーションや神経ブロックを用いた体験的フィードバックによる期待度を活用した治療を開発し、それぞれ報告している。また、消化管超音波、心拍変動等のツールを用いて、共鳴現象といった相互作用の評価や、そのフィードバックとの関連をそれぞれ報告しており、現在、共食やコミュニケーションといったケア領域での応用を目指している。
4. 機能性身体症候群における精神生理学的評価と心理的評価を用いた病態の検討
機能性身体症候群の病態を,自律神経機能を中心とした複数の生理指標と心理テストによる心理指標で評価し,QOLやADL,病悩期間といった臨床指標を含めた包括的関連の検討を進めている自律神経機能では,安静時指標のみではなくストレス負荷時やストレス負荷消失後の動的反応性が重要であり,これらの特徴を検討している.
5. 生体指標としての疼痛閾値(外受容感覚)と内受容感覚の検討
経皮的な電気・圧刺激に対する疼痛閾値や,呼吸や心拍など生体内の状態に対する内受容感覚が,末梢組織での異常による各種身体症状や中枢性感作が関与して症状が増強した状態のバイオマーカーとして注目されている.各種心理指標との関連についての横断的検討や,心理療法による介入を行う縦断的検討を通じて,機能性身体疾患や慢性疼痛におけるこれらの意義を明らかにしていく.
6. 身体活動による心理・認知機能改善効果と、その活動量への感受性の関連
長期的な有酸素運動などの身体活動は,情動や生理・認知機能に大きな影響をもたらす.その機序や生体感覚,主観的な運動の感覚との関係について,運動介入による縦断的検討を進めている.
7. 会話分析を用いた,診療場面での医療者と患者の相互行為の研究
実臨床場面での医療者・患者の具体的な実践を録画データから質的に検討し,コミュニケーションの質の改善に向けた知見を集積している.診察開始時での開放型・閉鎖型質問の使い方,共感的態度の解明,診察中の検査導入におけるShared decision makingなどの検証を進めている.
8. 機能性ディスペプシアにおける胃粘膜・中枢での知覚過敏と,生理・心理機能の検討
機能性ディスペプシアの病態には,消化管運動異常と知覚過敏がある.前者は消化管造影検査を用いて可視化し,後者の評価には上述の疼痛閾値や内受容感覚,飲水試験を用いることで,これらの関連を検討している.
9. 光環境サイクルの心身症治療への応用
精神疾患や非特異的腰痛への高照度光療法の有用性が報告されており,心身症治療への応用を目的に光環境の生体に与える影響を検討している.